ひどい腹痛、発熱、長引く下痢、血便の症状があるときに考える病気
細菌性腸炎の可能性
タイトルにあるような症状でお困りの方がこのページを見ているのではないでしょうか。数日前に焼鳥屋で「とりわさ」を食べませんでしたか?心当たりがある方はこのまま読み進めてください。読んだ後は、すぐに病院を受診し医師に「とりわさ」を食べましたと言ってください。
消化器科として外来をしていると、このような方が受診されることがたびたびあります。腸炎のほとんどはウイルス性腸炎です。いわゆるおなかの風邪です。水分をしっかりとって家でゆっくりと休むことが治療となります。ただし、嘔吐や下痢が酷く脱水となる場合は、病院で点滴を行った方がいいでしょう。
細菌性腸炎にかかった場合は、今までに経験したことのないような辛い症状のため、患者さんは不安に感じ病院を受診されます。細菌性腸炎は、悪化することがあるので原因菌を培養検査にて特定した方がいいのと、抗生剤を飲んだ方が早く治る場合があるため、必ず病院を受診してください。
細菌性腸炎を引き起こす原因菌としては、病原性大腸菌(O-157など)、カンピロバクター、サルモネラなどがあり、皆さんも聞いたことがあると思います。その中でも外来で比較的よく見かけるカンピロバクター腸炎について説明しようと思います。
カンピロバクター腸炎について
カンピロバクターは、生肉から感染することが多い菌です。感染する頻度が高い食事は、焼鳥屋でよく食べる「とりわさ」です。「とりわさ」は、外は火が通っていますが中は生焼けです。
私も「とりわさ」を食べてカンピロバクターに感染しました。寒気がして、熱が出でて、いつもの胃腸炎とは違うなという印象でした。採血をすると、白血球数の増加、CRP値の上昇(10 mg/dlくらいまで上がることもあります)があり、便培養でカンピロバクター腸炎と診断されました。便培養は、1週間ほど結果が出るまでかかるため、腹痛、発熱、下痢、採血で炎症反応の上昇、「とりわさ」を食べたということで診断され、抗生剤(クラリスロマイシン)を内服しました。
それ以来「とりわさ」は食べていません。症状が酷かったのと、カンピロバクター腸炎にかかった後に、ギランバレー症候群を起こす可能性があるからです。ギランバレー症候群とは、神経の難病で運動麻痺がおこります。手の力が入りにくくなったり、立てなくなったり、最悪呼吸ができなくなり亡くなることもあります。
こんな恐ろしいギランバレー症候群ですが、意外とかかっている人がいます。私の後輩もかかりました。入院しているところにお見舞いに行きましたが、病室に人工呼吸器が置いてありました。いつ呼吸ができなくなっても大丈夫なように、準備されていました。恐ろしい…。また、筋トレYou Tuberの「芳賀セブン」さんもギランバレー症候群になっています。火が通っていない鶏肉を食べたのが原因だそうです。
You Tube動画はこちら https://youtu.be/8IfBBvjOow4?si=jQKLxficI7JDM3RI
私は、昨年外来で3人ほどカンピロバクター腸炎にかかった患者さんをみましたが、問診ですぐに診断できました。キーワードは、やはり「とりわさ」です。みなさんに、カンピロバクター腸炎の可能性を説明し、クラリスロマイシンを処方しました。便培養の結果、カンピロバクター腸炎の診断が確定しています。便培養の結果を聞きに来ない方がいらっしゃいました。カンピロバクター腸炎は、治った後にギランバレー症候群が発症しないか注意しなければいけないので、必ず便培養の結果を聞きに来ていただきたいです。
「とりわさ」おいしいですけどね。意外と怖いカンピロバクター腸炎のお話でした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。このブログが皆さんの役に立てば嬉しいです。
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