循環器、ICUで役立つ薬液の作り方(DOA, DOB, ニトログリセリン、ペルジピン、ヘルベッサー、ハンプ)
循環器内科、ICUの先生は使い慣れている薬剤も、その他の内科医、外科医からするといざという時に思い出せない薬液の作り方、使い方。専修医時代に学んだメモが出てきたのでいざというときに使えるように自分のメモとして記録しておきます。なお、私個人のメモなので使用する際はご自分でも一度よく調べてから自己責任でお使いください。
イノバン (ドパミン塩酸塩)、ドブトレックス (ドブタミン塩酸塩)、ミリスロール (ニトログリセリン)、シグマート (ニコランジル)、ペルジピン (ニコランジル)、ヘルベッサー (ジルチアゼム)、ハンプ (カルペリチド)
種類 | 薬剤名 | 1A or 1V の内容 | 作り方 | 濃度 | 使用流量 |
昇圧剤 | イノバン DOA (ドパミン塩酸塩) |
1A中に100 mg/5 ml | 体重 (kg)×0.15 ml+生食 〇〇 ml =Total 50 ml | 1γ=1 ml/hr | 3γ-20γ |
ドブトレックス DOB (ドブタミン塩酸塩) |
1A中に100 mg/5 ml | 体重 (kg)×0.15 ml+生食 〇〇 ml =Total 50 ml | 1γ=1 ml/hr | 3γ-20γ | |
ノルアドレナリン | 1A中に1 mg/ml | 体重 (kg)×0.15 ml+生食 〇〇 ml =Total 50 ml | 0.1γ=2 ml/hr | 0.05γ-0.3γ | |
血管拡張剤 | ミリスロール (ニトログリセリン) |
1A中に 5 mg/10 ml 1A中に50 mg/50 ml |
原液 | 0.1γ= 体重 (kg)×0.012 ml/hr | 0.2γ-1γ |
シグマート (ニコランジル) |
1V中に12 mg 1V中に48 mg |
4V+生食 48 ml 1V+生食 48 ml |
1 mg/hr=1 ml/hr | 2 ml/hr-6 ml/hr | |
Ca拮抗薬 | ペルジピン (ニカルジピン) |
2 mg/2 ml 10 mg/10 ml |
原液 | 1γ=体重 (kg) ×0.06 ml/hr | 2γ-10γ |
ヘルベッサー (ジルチアゼム) |
1V中に10 mg 1V中に50 mg |
体重 (kg)×3 mg+生食〇〇 ml=Total 50 ml | 1γ=1 ml/hr | 2γ-10γ | |
利尿剤 | ハンプ (カルペリチド) |
1V中に1000 μg | 5V+生食 or 蒸留水 50 ml | 0.1γ=体重 (kg)×0.06 ml/hr | 0.05γ-0.2γ |
イノバン (ドパミン塩酸塩) DOA
イノバンは、0.1%、0.3%、0.6%のシリンジやバッグキットが出ているので自分で調整することはあまりないかもしれません。キットになっているものは、パッケージに体重、投与速度、γの表がついているので、表を見て3-20γの間で流量を調整してください。表にあるアンプル製剤の場合、体重60 kgの人であれば、イノバン 9 mlと生食41 mlで全量 50 mlに調整して使用してください。3 ml/hr-20 ml/hrの間で使用します。
ドブトレックス (ドブタミン塩酸塩) DOB
ドブトレックスもイノバン同様に、0.1%、0.3%、0.6%のシリンジやバッグキットがでていますのでイノバンと同じように使用します。
ノルアドレナリン
ノルアドレナリンは、自分で調整しなければいけない薬剤のひとつではないでしょうか?敗血症性ショックの患者さんを診るときに使用することが多いと思いますが、とっさに使おうとすると忘れがちですよね。体重 60 kgの人であれば、ノルアドレナリン 9A+生食41 mlで全量50 mlで調整して1 ml/hrから始めます。ICUにいた時に習ったのはこの方法ですが、緊急で使用する場合すぐに9Aも用意できないこともあるかもしれません。ノルアドレナリン 3A+生食47 mlで全量50 mlに調整する方法をよく見かけます。その場合は、体重60 kgの人であれば3 ml/hrからのスタートになります。
ミリスロール (ニトログリセリン)
狭心症や心不全の時に使用する薬剤になります。血圧が下がりやすいので使用時はとにかく血圧に注意してください。開始流量より少ない量からスタートしてもいいかもしれません。体重60 kgの人であれば、原液を1.4 ml/hrからの開始となりますが、1 ml/hrからスタートするといいのではないでしょうか。
↓「日本化薬」から使用方法の説明があるのでリンクを貼り付けておきます。
https://mink.nipponkayaku.co.jp/product/di/ty_file/mili_ty.pdf
シグマート (ニコランジル)
ミリスロール同様に狭心症や心不全の時に使用する薬剤になります。ミリスロールと比べて血圧が下がりにくいのが特徴で、循環器を専門としない医師は、こちらの方が使いやすいのではないでしょうか。ニコランジル48 mgを生食48 mlに溶いて、2 ml/hrから6 ml/hrの流量で調整します。
ペルジピン (ニカルジピン)
脳出血や高血圧緊急症など血圧を下げたいときに使用する薬剤になります。病棟指示で高血圧時にペルジピン 1A (2 mg) + 生食 50 mlをドリップで使用することがありますが、効果が一時的ですので持続静注する方が血圧をコントロールできます。60 kgの人であれば、原液を7.2 ml/hrから開始になります。効果をみながら増量、減量していきます。ペルジピンの原液は血管炎を起こすので、中心静脈ルートから行くか、メインの側管から投与する必要があります。末梢血管から行く場合は、5倍から10倍希釈が必要です。
↓「サワイ」より、ニカルジピン早見表がありますのでリンクを貼っておきます。
https://med.sawai.co.jp/file/pr44_148.pdf
↓「LTLファーマ」よりペルジピンQ and Aリストがありますのでこちらも参考になります。
https://www.ltl-pharma.com/common/pdf/product/perdipine/perdipine_faq.pdf
ヘルベッサー (ジルチアゼム)
上室性頻拍の時に使うことが多い薬剤です。降圧作用もありますので血圧に注意しながら使用します。体重60 kgの人であれば、ジルチアゼム180 mgを生食50 mlに溶いて2 ml/hrで開始します。
ハンプ (カルペリチド)
心不全の時に使用する薬剤です。利尿作用があります。やはり血圧が下がりやすいので使用する際は血圧に注意してください。ハンプ5Vを生食50 mlで溶いて、体重60 kgの人であれば1.8 ml/hrからスタートします。
以上が説明になります。専修医時代のメモをまとめてみました。使用する際は、添付文書をよく読みご自分で確認して使用してください。
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